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次世代グリーンデータセンターのキー技術「広帯域光SSD」


情報は、ビジネスでもプライベートでもあらゆるシーンで重要な役割を果たしています。特に企業においては、情報はその存続や発展にかかわる重要な資産です。情報の多くは、データセンターや企業内に設置されたサーバー内にあるSSDなどのストレージにデータとして保管されています。ストレージへのデータの送受信や保存は電気接続の機器が主流となっていますが、新たな選択肢として光接続を採用しようとする動きがあります。私たちキオクシアは、来るべき光時代の到来に対応するデータストレージのひとつである「広帯域光SSD」の研究開発に積極的に取り組んでいます。

ビジネスや生活での利便性の向上により爆発的に増加するデータと消費電力量
AI、デジタル技術の進化で、「日々の生活が便利になったな、大きく変わったな」と感じる機会が増えている方も多いのではないでしょうか。この理由のひとつには、私たちが普段使っているパソコン、スマートフォン、家電製品の高機能化、そして、ネットワークを介したさまざまなサービスを利用する機会が増えたことがあります。また、生成AIの進化による翻訳、文書要約やプランニングなどの新しいサービスも登場しています。一度手に入れた便利さを手放すことは難しいものです。デジタル社会の中でよりよい生活を送るためには、大規模で高機能なデータセンターと、それを支える大規模な電力供給が必要になります。
このためには、データセンター数の増加・大規模化と同時に、データセンター内の各種機器の高機能化や高速化、ネットワークの広帯域化・低遅延化が必要になりますが、既存技術の延長だけでは、例えば、突然データセンターが停止し、オンラインショッピングでの電子決済、動画配信のサービス、遠隔医療、官公庁や企業のシステムなどがストップし、私たちの日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
このような事態を回避するためには、データセンターの性能・機能向上と省電力化を同時に実現する、環境・社会・経済の観点を考慮したサステナブルな次世代技術の開発が必要になっています。
データセンターとストレージの基本を詳しく知る
「SSD Doujinshi」:マンガでわかりやすく解説しています。

光技術がデータセンターを内側から変える
現在、データセンターで稼働するサーバー内の主要なコンポーネント、例えばCPUやSSD、NIC(Network Interface Card)などはPCI Express®(PCIe®)を介して接続されています。PCIeは、デバイスとCPU間の高速なデータ転送を可能にする接続規格で、世代を重ねるごとに2倍の広帯域化を進めてきました。広帯域化とは、データの伝送に利用する周波数の幅を広くすることを意味し、帯域が広くなれば高速通信や大容量通信が可能になります。
例えば、PCIe第4世代では16 GT/sで、第5世代は32 GT/sでデータを転送することができます*1。

- 転送速度はギガ転送で測定され、エンコード前の理論上の最大速度を示しますが、実際の速度は遅くなる場合があります。
- イメージ。キオクシア調べ(2024年8月時点)
現在、PCIe第7世代の検討が進んでおり、従来の電気接続に加え光接続を標準のひとつとして採用しようとする動きがあります。データセンター、システム構成の自由度向上と運用最適化のための主なアドバンテージとして以下の3点があげられます。
光のアドバンテージ1:サーバーとSSD間の物理的距離を飛躍的に長くできる
光接続では、サーバーとSSDに代表されるキーコンポーネント間の物理的距離を飛躍的に長くすることができます。これにより、従来はひとつの筐体(サーバー)に収めていた各キーコンポーネントの配置の自由度が向上し、効率的なデータセンターの構築・運用保守の実現に貢献できます。

光のアドバンテージ2:発熱問題に対応するコンポーネント配置のフレキシビリティ
膨大なデータを高速処理するために、データセンターには数多くの高性能なサーバーが必要です。そのため、電力や発熱量が増大してデータセンター内部が高温になり、適切な冷却設備が無ければサーバーの誤作動やシステムダウンを起こす危険性があります。現在のデータセンターの多くは、発熱量(消費電力)に差があるコンポーネントが1つのサーバー内に収められています。これらは最も発熱量の大きなコンポーネントを基準に冷却するよう設計されており、消費電力の低いコンポーネントも含めて冷却しているため電力の無駄が生じます。
光接続によりサーバーコンポーネントを拡張することで、各コンポーネントの発熱量を基準に、液冷や空冷といった冷却設備や電源設備を物理的に分離し適切に配置することができるようになります。データセンターの「冷やし過ぎ」を防ぐことができるようになり、電力消費を最適化できる可能性があります。

光のアドバンテージ3:スリムで柔軟なケーブルとコネクター
光ケーブルは電気接続と全く同じ帯域を実現しながら、スリムで柔軟なコネクターとケーブルです。ハーネスよりも細く柔らかいため、システム構築・保守の際の容易性・効率性を向上することができます。さらに、電気接続よりもノイズに強く、宇宙や工場など、過酷な環境下への適用も期待されます。

爆発的なデータ量増加に対応するためにパートナーとともに社会実装を目指す「次世代グリーンデータセンター技術開発」プロジェクト
キオクシアは、2022年2月にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)により公募された国家プロジェクトの「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」における「次世代グリーンデータセンター技術開発」(以下、本プロジェクト)に、富士通株式会社、日本電気株式会社、アイオーコア株式会社、古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ株式会社、京セラ株式会社とともに取り組んでいます。
各社は分担して、データセンターにおける省エネ化・大容量化・低遅延化により今後の爆発的なデータ量増加に対応するための3つの研究開発に取り組むことで、2030年までに本プロジェクト開始時点で普及しているデータセンターと比較して、40%以上の省エネ化を目標としています。
取り組む研究内容
- 光エレクトロニクス技術の開発(光電融合デバイス開発、光スマートNIC開発)
- 光に適合したチップなどの高性能化・省エネ化技術の開発(省電力CPU開発、省電力アクセラレータ開発、広帯域SSD開発)
- ディスアグリゲーション技術の開発
※表を左右にスクロールすることができます
アイオーコア株式会社 |
富士通株式会社 |
古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ株式会社 |
京セラ株式会社 |
富士通株式会社 |
日本電気株式会社 |
キオクシア株式会社 |
---|---|---|---|---|---|---|
光電融合デバイス開発 |
CPO適用技術 |
高変調効率光エンジン技術開発 |
光電集積デバイスパッケージング技術開発 |
省電力CPU開発 |
ディスアグリゲーション技術開発 |
広帯域光SSD開発 |
次世代グリーンデータセンターでは、光技術を採用したシステム設計により、SSDやCPUなどをコンポーネント単位に分割し、それらを柔軟に相互接続することができるようになります。従来よりも設置やデータ処理のフレキシビリティが大幅に向上し、アプリケーションに最適なシステムをダイナミックに構成する「ディスアグリゲーテッドコンピューティングシステム」のさらなる進化をもたらします。このシステムにより、データセンターの効率を向上させ、リアルタイムでのリソース管理やデータ分析を可能にし、持続可能なITインフラの構築に寄与します。
ディスアグリゲーテッドシステムとは
ディスアグリゲーテッドシステムとは、コンピューティングリソースやデータストレージを物理的に分離・独立させたアーキテクチャです。現在は電気接続を前提に開発していますが、光技術を活用することで、柔軟なシステムアーキテクチャによる高速データ処理とアクセスを実現できるようになり、環境性能や処理能力の向上が期待されます。
キオクシアの広帯域光SSD
本プロジェクトでキオクシアは「広帯域光SSD」の研究開発を担当し、これには次の3つの開発内容が含まれます。

光SSD
キオクシア製ビジネス向けSSDに接続する、光電変換機能を持つブリッジボードの開発による、光インターフェイスSSDの実現

ストレージシステム
複数の光SSDを集約・格納し、外部からのコントロールに対応できる機能を装備したハードウェアの開発

ストレージ管理ソフトウェア
日本電気株式会社の研究開発内容である、効率的なシステム運用のためのディスアグリゲーション技術と連携・協働したSSDの利用を実現するソフトウェアの開発
キオクシアは、光SSDのコンセプトモデルを、2024年8月に開催されたフラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「FMS (the Future of Memory and Storage) 」で、初めて一般に公開しました。

以下のデモは、サーバーに直接電気で接続したキオクシア製エンタープライズSSDと、40 mの長さの光ファイバーで接続した光SSDのコンセプトモデルの動作を比較するシンプルなものです。実際のデータセンターとはサーバーの距離は大きな違いがありますが、性能にほとんど差がないことを示しました。

光SSDの今後の事業開発に向けて
キオクシアは、ヨーロッパ、台湾、日本国内など各地で光SSDに関するデモ展示を行っており、2025年開催の大阪万博での展示も予定されています。さまざまな業界、地域の方々から、アプリケーションの可能性や開発の方向性について、貴重なご意見や賛同を頂いています。
本プロジェクトは2026年3月頃までは研究開発活動にフォーカスし、2026年4月以降より段階的に社会実装へと活動の軸足を移す計画となっています。キオクシアは、グリーンデータセンターの実現に向けて、想定されるユースケースを実現するシステムやアプリケーション、具体的な市場・顧客セグメントを特定していきます。例えば、ディスアグリゲーテッドシステムと組み合わせ、重要かつ大容量のデータを、複数の仮想システム間でパフォーマンスを低下させることなく共有し、生成AIシステムを効率よく運用するなど、社会の利便性向上に貢献するユースケースを実現するパートナーシップの構築を推進する予定です。
- PCI Express、PCIe は、PCI-SIG の登録商標です。
- その他記載されている社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。