NAND型フラッシュメモリとは

キオクシアは1987年に世界初のNAND型フラッシュメモリを発明しました。フラッシュメモリの構造と、データを記憶するメカニズムを説明します。

フラッシュメモリはデータを記憶する半導体

皆さんは、フラッシュメモリをご存じですか?
フラッシュメモリはデータを記憶する半導体で、スマートフォンをはじめとした身近にある多くの電子機器で利用されています。キオクシアは、1987年に世界初のNAND型フラッシュメモリを発明し、現在も世界で有数のフラッシュメモリ開発、製造を行う企業です。
NAND型フラッシュメモリはフラッシュメモリの中でも世界でこれまで最も幅広く使われているメモリです。

それではフラッシュメモリがどのようなものか、見ていきましょう。
スマートフォンが文字や画像、音楽などさまざまなデータをフラッシュメモリに記憶できるのは、あらゆるデータを「0」と「1」のデジタルデータで表現しているからです。
たとえば、あなたのスマートフォンに写真が表示されているとします(図1)。この画像を拡大してよく見てみると点(ピクセル)の集合で構成されています。一つ一つの点は、光の三原色、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)で構成されます。これをデジタルデータでは、それぞれの光の明るさを8個の「0」と「1」(2の8乗)256段階で調整し、全部で24個の「0」と「1」の組み合わせでおよそ1677万色(赤256段階×緑256段階×青256段階)を表現できます。例えば図1の写真のピンク色は、鮮やかな赤の光(11111111)、濃い緑の光(10000000)、鮮やかな青の光(11000000)の組み合わせで「111111111000000011000000」として記憶することができます。
このようにして、スマートフォンに入っているテキストや画像、音楽などのデータはすべて、「0」と「1」の組み合わせで記憶されているのです。

図1 画像の拡大イメージ

フラッシュメモリの構造と、データを記憶するメカニズム

次に、実際のフラッシュメモリの構造と、データを記憶するメカニズムについて説明します。図2は、フラッシュメモリのメモリセル構造(断面)を示したものです。メモリセルとは、データを記憶する最小単位であり、フラッシュメモリは近年では数千億個ものメモリセルから構成されています。絶縁体に囲まれた電荷蓄積膜に、電子を出し入れすることによって、データを記憶します。

図2 メモリセルの構造

この電荷蓄積膜にどのようにして電子を出し入れするか、図3で説明します。制御ゲート(Control Gate)に高電圧(Vcg(++))を加えると、電子が絶縁体を通過しシリコン基板から電荷蓄積膜へ入ります(図3(a))。電圧を切ると、そのまま電子が蓄えられた状態になります。一方、シリコン基板側に高電圧(Vw(++))を加えると、電子が絶縁体を通過し電荷蓄積膜からシリコン基板側へ出ていきます(図3(b))。その結果、電荷蓄積膜には電子が無い状態なります。これがメモリセルへのデータの書き込み、消去の動作となります。

図3 データの書き込み・消去の動作

データの「0」、「1」の判定について

次に、データの「0」、「1」の判定について説明します。制御ゲートに一定電圧(読み出し電圧Vcg(+))を加えたときに、メモリセルの横方向に電流が流れるか、流れないかでデータの「0」、「1」を判定します(図4(a)(b))。制御ゲートに電圧を少しずつ加えたとき、メモリセルに電流が流れ始める制御ゲートの電圧を、しきい値電圧と呼んでいます(詳しくは、多値化技術の項参照)。このしきい値電圧が、電荷蓄積膜に電子が入っているか否かで変わることを利用して、「0」、「1」の判断を行っています。電荷蓄積膜に電子が入っている(データ「0」)状態では、しきい値電圧が読み出し電圧Vcg(+)より高いため、電流が流れません(図4(a))。一方、電荷蓄積膜に電子が入っていない(データ「1」)状態では、しきい値電圧が読み出し電圧Vcg(+)より低いため、電流が流れます(図4(b))。
これら「0」、「1」の状態は電源を切った状態でも保持されます。これが、電源を切ってもデータが消えないという、フラッシュメモリの特徴です。

図4 「1」「0」の判定方法

このメモリセルを直列に配置した図5のような構造のメモリを、NAND型フラッシュメモリと言います。NAND型フラッシュメモリは、メモリセルを高密度に配置できる特徴を持っています。デジタルカメラのカードに搭載され、その後メモリの容量が増えるにつれ、携帯音楽プレーヤー、ビデオカメラ、携帯電話、スマートフォンなどに搭載されることで、その用途と市場が大きく広がってきました。

図5 NAND型フラッシュメモリ