新規酸化物半導体InAlZnOをチャネルに用いた短チャネル(Lg=40nm) 立体ゲート縦型トランジスタの動作実証

2020年7月21日

5G時代到来によりモバイル端末の活用拡大が見込まれることから、半導体機器の小型化かつ低消費電力化がよりいっそう望まれています。こうした背景から、 (1) 超低消費電力(待機電力がシリコントランジスタに比べて100億分の1以下)(2) 多機能化・低コスト化(CMOS-LSI配線工程での三次元積層による機能集積とチップサイズ縮小)[1]といった特徴を持つ酸化物半導体トランジスタが近年注目を集めています。

この酸化物半導体トランジスタの課題の一つは、熱安定性の向上です。現在主流の酸化物半導体であるInGaZnO(IGZO)を用いるとメモリ素子製造過程で必要な高温熱処理によってトランジスタが正常に動作しなくなります。

この課題に対し、私達は熱安定性の高い新規酸化物半導体材料としてInAlZnO(IAZO)を新たに提案しました。さらに、このIAZOをチャネルに用いた三次元積層による高集積化が可能な立体ゲート縦型トランジスタを提案し(図1)、ゲート長40nmの素子の動作実証に世界で初めて成功しました(図2)。今回動作実証に成功したトランジスタは、1011サイクル以上の高いOn/Off耐久性も達成しています(図3)。これらの成果はシリコントランジスタでは成しえない大容量・低遅延・超低消費電力なメモリ製品を実現する基盤技術となります。

図1 作製した酸化物半導体チャネル立体型ゲート縦型トランジスタの模式図と断面TEM画像
図2 縦型トランジスタの電気輸送特性
図3 パルスゲートストレス下の耐久性特性

本技術は2020年6月に開催された国際学会「VLSIシンポジウム」において発表を行いました。[2]
また本発表は今回のVLSIシンポジウムを代表する論文(Tip Sheet)の一つに選ばれるなど注目を集めています。

[1] M. Oota, Y. Ando, K. Tsuda, T. Koshida, S. Oshita, A. Suzuki, K. Fukushima, S. Nagatsuka, T. Onuki, R. Hodo, T. Ikeda, and S. Yamazaki, “3D-Stacked CAAC-In-Ga-Zn Oxide FETs with Gate Length of 72nm”, 2019 IEEE IEDM, pp.50-53.
[2] H. Fujiwara, Y. Sato, N. Saito, T. Ueda, and K. Ikeda, 2020 IEEE Symposium on VLSI Technology, TH2.2.