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AIの普及やDX化の加速により、大容量で低コストの高速不揮発性メモリの必要性が高まっています。その有望な候補として、スピン注入磁化スイッチ型磁気メモリ(STT-MRAM)の研究開発が進められています。STT-MRAMでは、メモリ素子として磁気トンネル接合(MTJ)素子を用います。将来、より大容量かつ低コストのメモリを実現するためには、MTJ素子の微細化開発が必要不可欠です。
今回我々は、微細化したMTJ素子で生じる特性劣化の測定を行いました。さらに、第一原理計算結果に基づいた劣化の時間発展を表現するモデルを用いることで、劣化メカニズムの解明と劣化対策の提案を行いました。この結果は、高密度なSTT-MRAMの信頼性の向上に対して貢献できると期待できます。
微細化したMTJ素子に長時間電圧をかけると、ごく少数の不良素子で抵抗が徐々に増大し、読み出しに用いるトンネル磁気抵抗比(TMR比)が低下するという問題を実験的に確認しました。このような劣化は、メモリの読み出し動作に悪影響を与えるため、大きな問題となります。
図1に劣化の時間発展モデルで得られた結果を示します。MTJ素子のバリア層界面における酸素に関する欠陥の発生により実験で得られた劣化の傾向を再現できることを明らかにしました。さらに、初期状態におけるバリア層界面の酸素欠損の濃度を減らすことで、特性劣化を抑制できることを提案しました。本研究はキオクシアと三重大学が共同で行ったものです。
本成果は、国際学会2024 IEEE IRPS (International Reliability Physics Symposium) で発表されました。
文献
[1] R. Takashima et al., 2024 IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS), Dallas, USA, P10.EM.