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ウェハマップ傾向分類の重要性
ウェハマップとは、ウェハ上でどのチップが不良となったかを示すデータで、ウェハマップ傾向は不良原因毎に様々な傾向を持っています。そのため、ウェハマップ傾向別に原因分析を行うことで、真の不良要因を特定し、対策へと進めることができます。そのような背景から品質改善においてはウェハマップ傾向分類の精度が重要となっています。
ウェハマップ分類の課題
従来ではクラスタリング手法を使った分類を行っています。しかし、従来手法では日々定常的に発生し、発生ウェハ数がある程度多いウェハマップ傾向(以降、既知マップと表記)は分類できるものの、新規トラブルや発生頻度の少ないウェハマップ傾向(以降、新顔マップと表記)はうまく分類できないという課題があります。新顔マップを正確に分類することで、品質異常の早期検知と早期解決に繋がることから、新顔マップを分類する手法を、三重大学と共同で研究しました。
本共同研究提案手法
本研究で開発した手法は2点あります。1点目が既知マップを正確に分類しながら、新顔マップ検知を可能とする「2値分類器直列モデル」、2点目が新顔マップ検知の精度を上げるための「疑似新顔マップによるデータセット増強」です。
手法①:2値分類器直列モデル
2値分類器とは、ある特定の面内傾向とそれ以外を分類する機械学習モデルです。各既知マップ別に2値分類器を作成し直列につなげることで、各分類器が濾過フィルターのような役割を果たします。この直列につなげたモデルに既知マップ、新顔マップが混在するデータセットをインプットすると、どの2値分類器でも反応しなかったマップが最後まで残り、ここに新顔マップが集まってくるという手法です。
手法の検証には、Kaggle(カグル)にて公開されている、様々なウェハマップ傾向画像とラベルが付与されたWM-811Kデータセットを使⽤しました[1]。本データセットに含まれる7種類のウェハマップ傾向のうちDonutを新顔マップ、それ以外を既知マップと設定して精度検証を行いました。
検証の結果、既知マップは従来手法と同等の精度で分類でき、新顔マップは最後に残ったマップ群のうち、30%が実際に新顔(Donut)の精度で分類することができました。そこからさらに精度を改善するため、次の手法の検討に取り組みました。
手法②:疑似新顔マップ追加によるデータセット増強
最後に残るデータを見た際に純粋な新顔マップだけが残っている状態にするには、既知マップを高精度に分類する必要があります。つまり各2値分類器の精度向上が重要です。そこで精度向上施策として、GANベースの生成モデルにより疑似新顔マップを生成し、各2値分類器の学習に用いるデータセットの増強を行いました。これにより各2値分類器の精度向上を達成し、直列につなげることで既知マップの分類精度は保ったまま新顔マップの分類精度を10%近く向上させることができました。
今後の展望
本共同研究によって新顔マップの検出の手法を考案しました。この手法によって品質異常の早期検知が可能となり、品質の安定化に貢献する技術として期待できます。今後、本手法の実用化を目指して検証を進めていきます。
この共同研究で検討した手法をAEC/APC Symposium Asia 2023で発表しました。
文献
[1] Kaggle, WM-811K wafer map