選択素子における閾値電圧緩和特性のサイクルストレス依存性理解

2023年2月15日

次世代メモリセルアレイに搭載する選択素子の有力候補として、カルコゲナイド材料を用いた2端子素子が近年注目を集めています。本研究では、エレクトロニクス技術における世界的な研究機関imecと共同で、選択素子の信頼性向上技術開発に取り組みました。評価対象とした素子では、電界印加に伴う伝導パスの形成/消失が、ON/OFFスイッチング動作の原理であると考えています(図1)。

図1:選択素子の構造とON/OFFスイッチング動作の原理

ON/OFFスイッチング動作の繰り返しにより素子にストレスが印加されると、オフ時の待機時間(緩和時間 trelax)と共に閾値電圧(Vth)が増大する “Vth緩和” が顕著化し(すなわちVth緩和レートが増大し)、同じ待機時間が経過した場合でも、ストレス印加前と後ではVthの値が異なることを発見しました(図2)。前記Vth緩和の加速はVthの不安定要因であり、回路動作の長期信頼性に大きな影響を及ぼすことが予想されます。

図2:Vth緩和のサイクルストレス依存性
  • 緩和レート:緩和時間1桁あたりのVthの変化量

上記問題を解決するため、高精度な電気特性評価技術とモデリング技術を融合させてメカニズムを検討し、サイクル動作中に生成されるジュール熱が、Vth緩和加速の起源であることを明らかにしました。さらに、前記提案メカニズムの妥当性を検証するため、耐熱性の高い材料を用いることでサイクルストレス印加に伴うVth緩和の加速が抑制できることを示しました(図3)。
以上の成果は、選択素子を搭載したメモリセルアレイの長期信頼動作に貢献できると考えられます。

図3:熱安定性の高い材料を用いた、サイクルストレスに伴うVth緩和加速の抑制

本成果は2022年12月に開催された国際学会IEDM(International Electron Devices Meeting)において発表されました[1]

本稿は、文献[1]@2022 IEEEから図面等一部を抜粋&再構成したものです。

文献
[1] M. Yamaguchi et al., IEDM2022, pp.94-97