ネットワークストレージ技術

2020年5月19日

ビッグデータやSNS等のアプリケーションによる劇的なデータ量の増加とともに、必要となるストレージ容量は増加し続けています。一般にデータセンターでは、複数のストレージシステムをネットワークに接続するで大容量なネットワークストレージを実現しており、ストレージデバイスを追加接続することにより比較的低コストで容量を増強することが可能です。従来、ネットワークに接続されるストレージは、複数のSSDを持つストレージサーバーによって提供されていました。しかしながらストレージサーバーの処理能力やネットワーク帯域の制限がボトルネックとなり、NVMe SSDの持つ高速性や低遅延性を十分に活かせないのが現状です。そこで当社はこの問題を解決するために、直接ネットワークへ接続することで高速かつ低遅延なアクセスが可能となるSSDの開発を進めています(Ethernet SSD)。開発しているEthernet SSDはNVMe-oF™*1プロトコルに対応しており、Native NVMe-oF SSDとして標準化も完了しています。この標準では、高い信頼性のあるネットワーク環境においてRDMA*2方式を用いて通信し、直接接続したSSDと遜色のない約20μsecの低遅延性能を実現できます。Ethernet SSDを下図のようなエンクロージャに搭載することにより、これまでは専門的な知識や独自の技術が必要であった高速なアクセスを可能とするネットワークストレージが、より安価で簡単に使いやすくなります。

図1:Ethernet SSDを用いたシステム構成

図中のEthernet SSDはNVMe-oFをネイティブにサポートし、100GbEの高速ネットワークに接続してストレージサーバーやアプリケーションサーバーから使用します。デージーチェーンでEBOF*3を接続することにより高速かつ低遅延で安価なネットワークストレージを構築でき、データセンターのTCO*4の削減を図ることが可能となります。

  1. NVMe-oF (NVM Express™ over Fabric):NVMe(Non-Volatile Memory Express)の規格をネットワークストレージとして拡張した通信プロトコル。NVMe™およびNVMe-oF™はNVM Express, Inc.の商標です。その他記載されている社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。
  2. RDMA(Remote Direct Memory Access): CPUを介さずにデータを直接転送する方式。
  3. EBOF(Ethernet Bunch Of Flash):フラッシュアレイの実装形態の一つ。
  4. TCO (Total Cost of Ownership) :コンピューターシステム全体の総所有コスト。