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SSDのリユースでデータ社会の地球環境問題解決に貢献―情報社会のサステナビリティ―
デジタル社会の進展にともない、データの保存・処理に利用されるデータストレージの需要は爆発的に増加し続けています。同時に、電子廃棄物の増加が社会問題になっています。キオクシアグループは、SSDのリユースの可能性を高める技術の開発で、CO₂排出量の削減、電子廃棄物の削減に貢献することを目指します。
データ社会におけるストレージの使い捨て問題
デジタル社会の進展にともない、データの保存・処理に利用されるデータストレージの需要は爆発的に増加し続けています。同時に、多くの電子機器が生産、使用されるようになり電子廃棄物の増加が社会問題になっています。
The global E-waste Monitor 2024*1 によると、2022年には世界で6,200万トンもの電子廃棄物が発生し、そのうち適切に回収・再利用されたのは22.3%にとどまったとされています。さらに、2030年には発生する電子廃棄物の量が8,200万トンにまで増加し、再利用率は20%まで低下すると予測されています。
*1 United Nations Institute for Training and Research: The global E-waste Monitor 2024
PCやデータセンターに利用される代表的なデータストレージのひとつであるSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)に使用される3次元フラッシュメモリは、データの書き換えを繰り返すとその特性が劣化し、寿命を迎えると破棄されます。また、寿命を迎える前であっても、ユーザーが利用しなくなったSSDは情報漏洩リスクの観点から物理的に破壊され、廃棄されるケースが多くなっています。
SSDの廃棄はレアメタルを含む資源の消費につながります。また、SSDの製造には多くの電力を必要とするためCO₂排出が課題となっています。世の中を飛び交うデジタルデータが増えるほど増えていく廃棄物やCO₂排出量を抑制するためにも、この課題の解決が強く求められています。
ストレージのリユースの潮流
米国立標準技術研究所(NIST)の「媒体のデータ抹消処理(サニタイズ)に関するガイドライン」*2は情報媒体の種類、保存データの機密性に応じた適切なデータ抹消処理について定義していますが、その中で「環境配慮、製品再利用の観点で破壊よりもデータ消去の方が適切なケースがある」「データ抹消処理はコストや環境への影響を評価すべきである」と言及しています。
日本では、総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」2022年の改定で、ストレージ等の媒体が不要になった場合は破棄することが前提となっていたものが、リユースを考慮した内容になりました。*3
このことからも、ストレージの利用において情報セキュリティと同時に環境への配慮が求められていることが分かります。
*2 National Institute of Standards and Technology: Guidelines for Media Sanitization
*3 出典:総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」
令和2年12月版の同ガイドラインでは、情報資産の破棄について「情報資産の廃棄を行う者は、情報を記録している電磁的記録媒体が不要になった場合、記録されている情報の機密性に応じ、電磁的記録媒体の情報を復元できないように処置した上で廃棄しなければならない」とされていたものが、令和4年3月版では「情報資産の廃棄やリース返却等を行う者は、情報を記録している電磁的記録媒体について、その情報の機密性に応じ、情報を復元できないように処置しなければならない」と改定された。
キオクシアグループのアプローチ:
SSDのリユースの可能性を高める技術の開発
キオクシアは、熱処理によって3次元フラッシュメモリの特性を回復させ、半永続的に使用できるようにする技術を2023年に世界で初めて発表しました*4。この技術を実用化し、SSDのリユースの可能性を高め、CO₂排出量の削減、電子廃棄物の削減に貢献することを目指します。
*4 Yuta Aiba et al., “Demonstration of Recovery Annealing on 7-bits per Cell 3D Flash Memory at Cryogenic Operation for Bit Cost Scalability and Sustainability”, 2023 IEEE Symposium on VLSI Technology and Circuits.
画期的な手法によるフラッシュメモリの再生
3次元フラッシュメモリは、書き込み/消去サイクル(データの消去および書き込みができる回数)の上限を超えると、書き込み・読み出しの閾値電圧、データ保持などのセル特性が劣化し、ストレージとしての性能を満たせなくなります。キオクシアは、これらの3次元フラッシュメモリに対して特定の値を書き込んだ状態で回復アニール処理を行うことでセル特性を初期状態まで回復させられること、および、繰り返し回復できることを世界で初めて実証しました。
キオクシアは、アニール温度150℃程度で回復効果を得られること、これによりフラッシュメモリのチップやパッケージデバイスだけではなく、実装部品やコントローラーを含むSSDモジュール全体に対して回復アニール処理を行うことができることを確認しました*5。
この技術によってSSDの大幅な長寿命化を実現し、SSDの破棄を減らすことにより、資源の消費、電力消費量を削減し、デジタル社会が生み出す環境負荷の低減に貢献することを目指します。
*5 Hitomi Tanaka et al., “Overcome the End of Life of 3D Flash Memory by Recovery Annealing, Aiming for Carbon Neutrality in Semiconductor Manufacturing”, 2024 IEEE International Memory Workshop.
キオクシアグループの環境活動
キオクシアグループは、気候変動および環境配慮をサステナビリティ重要課題の一つに定めています。環境負荷に配慮した事業活動を推進し、持続可能な社会の実現に貢献します。
今後の展望
キオクシアグループは、今後も半導体資源の活用効率向上の技術開発に取り組み、サステナブルなメモリ技術でパートナーの皆さまとともに新たなビジネスにつなげ、地球環境・社会課題の解決への貢献、より多くの人の便利で快適な生活の実現への貢献を目指します。
ここで、キオクシアの本活動に共感いただき、技術の活用方法の検討を一緒に進めていただいているパートナー企業、AOSデータ社よりメッセージをいただいていますのでご紹介します。
AOSデータ社よりメッセージ
地球規模でのデータ社会に突入するなか、記憶媒体もサステナブルであることが求められます。キオクシア社のフラッシュメモリ再生技術は、業界のみならず、各企業のサステナビリティ経営にも資するものとなります。当社といたしましても、データの復旧サービス等を通じて大量の記憶媒体が日々持ち込まれる立場として、またAI利活用のデータプラットフォーマーとして、キオクシア社のフラッシュメモリ再生技術を応援して参ります。
今後もキオクシアの皆様と一緒に、安心して利用できる長寿命なSSDの実現に向けてコラボレーションを進め、サステナブルなデータ社会の発展に貢献する 最先端のソリューション開発に取り組んでいきたいと考えています。
AOSデータ株式会社
代表取締役社長 吉田 宣也
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